第39話   竿作りの工程              平成27年4月05日
 掘り上げて来た竹の枝を落とし、次いで根の泥を水できれいに落とす。
 自分の場合は、乾燥の進まぬうちに根の部分の曲がりを火に焙り、矯め木を使って大まかに曲りを出真っ直ぐにしてする。根の部分は特に堅いので、これを先にしておかないと後で真っ直ぐに矯めるのに、相当の苦労を必要とする事となる。根の部分を真っ直ぐに矯める事は、それ相当の技術を要する事で、竿の運命の何分の一かはここにかかっていると云っても過言ではない。又乾燥して堅くなった根の部分の曲がりを直すのに何度も何度も火にかける事となり、竹肌に焦げ目が入る原因の一つとなるのでこの段階でやっておきたい。
 一ヶ月ほど雨のかからぬ場所で天日にあてて良く乾燥する。その後家の中に入れてさらに23ヶ月陰干しする。その頃になると青い竹肌は次第に白色に変化してくる。春の陽射しが強くなって来た頃、竹肌を痛めぬ様に細心の注意を払い節から付き出た枝元を小刀で綺麗に削り、節についていた袴等もきれいに削り落とす。次に竹を温めた後、その昔ハゼの実で作られた和蝋燭を竹に塗り、又火にかけ一年目の荒ノシに取りかかる。本来は火鉢に炭をおこして、その上で竹を温めてから矯め木を用い竹を矯めて曲りや癖を矯正する。自分は簡単に火力の調整が出来るコロナのサロンヒーター(石油コンロ)を使用している。火にかけた時、竹をウェスで何度も拭き取り、節について取りきれなかった汚れ、黒いカス等を何度も拭いてきれいにする。一度目の荒ノシの段階で、竿の良し悪しの大半が決まるとも云われている工程なので、細心の注意を払って行いたい。竹の癖を見極めながら、更に矯め傷に注意しながらじっくりと矯めていく。
 矯め木はその人でも違うが、サクラ、ホウノキ、ツバキ、ヤナギの木等を使って角度の違うもの大小数種類を作って置くと良い。数日後、本ノシにかかる。節と節の間を真っ直ぐにし、更に一日くらい置いて節の部分を矯め真っ直ぐにする。
 その後陽の当たらぬ風通しの良い棚の上に置いて乾燥させ、一年置いて又矯めて行く。これを45年繰り返していくときっちりと竿は締まって、使っても曲りの少ない庄内竿へと変化していく。昔は家の中で火を使って居たので、棚に保管している内竹肌が、漆を塗ったように茶色に変化していったものだ。今では漆を塗ったような茶色に変化した竿は、大変貴重な竿と云える。煤で真茶色に燻された釣竿で虫が付かぬとされている。毎年のようにきちんと手入れされた釣竿は、その耐久性は100年とも云われ実用に供されていた。